コートのシルエット変更はどこまで可能か
おそらく90年代のものかと思われるカシミアコートを持ち込まれ、シルエットとサイズの修正が可能かというご相談を承りました。
持ち込まれたお客様のお父様が着ていたコートとのことでしたが、バブル景気のころのものですので贅沢に質の良いカシミアが使われています。あまり着ていなかったのかほとんど傷みもなく、さすがに捨ててしまうのは忍びないということでした。
ただ当時の流行のシルエットのため、基本的にはオーバーサイズ気味にゆったりと着るコートとなっており、着丈も長く、衿のゴージ位置、ボタンの位置、胸・腰のポケットの位置も総じて下にあるバランスが特徴的です。また、肩幅も広く作られており、肩が落ちないように厚い肩パッドで支えるのも当時の特徴でした。
当時はとにかく袖丈にしても着丈にしても長過ぎるぐらいで着るのが当然という時代でした。お父様と身長は同じくらいとのことでしたが、今着用してみると体に合っていないとしか思えないシルエット・サイズ感となってしまいます。
調整時はボタンやポケットの位置が全体的に下にあるため、デザイン的なバランスがおかしくならないよう、気をつける必要があります。着丈を6cm程度短くし、袖丈を4cm程度こちらも短くすることにしました。
あとは、肩パッド入りの肩のシルエットがかなり角ばっているため、パッドを3分の一程度に薄くし、かつ肩のシルエットを丸く調整し、袖を付け直します。
最近はオーバーサイズ的なシルエットのコートも若い方には流行っているので、ここまでの調整である程度違和感はなくなるのですが、今回のお客様は体にフィットしたシルエットにしたいとのご希望をお持ちだったため、さらに調整を加えます。
身頃の脇を胸周りから裾周りまで幅詰めし、袖も一周で3cm分程度細くしました。
調整後の仕上がったシルエットです。すっきりとしたシルエットになり、だいぶ雰囲気が変わったかと思います。
ただし、今回のコートで言えば、ポケット位置やボタン位置など、構造上修正が効かない箇所も存在します。よく見てみると近年の一般的なバランスと比較して、そうしたディテール部分が全体的に低い位置にあることがわかるかと思います。
調整箇所が多くなればなるほど、ほどいて、調整分をカットして、縫い合わせられるようラインを調整し直して、縫い合わせて、と作業量が増えていくため、調整料金は積み上がっていってしまうのですが、質の良い服や特別な思い入れのある服など、改めて着用できるようにしたいとお考えの服があるようなら、お気軽にご相談ください。お見積りは無料です。
できるできないの可否も含めて、ご予算とご希望に沿ったご提案を行います。
テーラーサクライ有限会社
住所:東京都調布市深大寺東町8-2-8
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